キンモクセイ


人を惑わすかの如く 雨の中香る花

貴方はこの香りが好きだった

 

いつも笑っていた貴方 今ここにはいない

遥か遠くに旅立ち 僕はもう貴方に会えない

思い出す笑い声 快活に笑う貴方は

何度も僕を助けてくれた

 

咲き誇る花 白黒の垂れ幕に香りづけ

僕の思いは花の中

橙は葉と共に揺れ動く 天の涙を幾つものせて

 

月の光をその身に受けて 夜闇に香る花

僕もこの香りは好きだった

 

貴方を亡くしたあの日 空は晴れ渡っていた

皮肉な程美しく 空は高かった

風のないあの日 ベッドの上で貴方は

音を立てるのをやめた

 

咲き乱る花 芳香は辺りを満たし

貴方が傍にいるようだ

僕はきっと忘れられない 空を翔る強い香りを

 

嫌いだとは口にしても 貴方の姿が頭に浮かぶ

微笑みながら僕を見て 貴方は僕の頭を撫でた

 

――言葉だけの『嫌い』は言葉にしか過ぎないもの――

 

地に落ちる花 その命を掻き消し

僕は貴方を思い出す

橙の花は散り消える キンモクセイという淡い花は

 

甘い香りは胸を心を いつまでもいつまでも締め付ける

駄詩TOP

Novel